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22 琴美視点②
総務部に偵察に行った帰り道、私は上機嫌だった。南野咲桜は二十九歳という年齢通りの女だったから。
分厚い眼鏡を掛けて黒髪を後ろでキュッとまとめていて、地味で冴えない年増女って感じ。どう見ても私の勝ちだろう。
亮くんと私は結婚するんだと牽制してやったら、嫌そうな顔をしている。ごめんなさいね、私が奪ってしまって。
亮くんとあの女は付き合っていることを会社には黙っていたらしい。
でも私は、私が亮くんの彼女だということをみんなに知ってもらいたい。公認の仲になっておかないと、あと半年でまた新しい子が入社してきてしまう。私が一番若いうちに亮くんとの関係を周りに認めさせておかないといけないのだ。
だから亮くんがあの女に返すつもりでまとめてあった荷物を、わざと総務部へ持って行ってやった。これで総務の人たちも察してくれただろう。亮くんがあの女を捨てて私を選んだってことを。
うちの営業課でも勘のいい人には私たちの仲はもうバレているだろうし、あとは亮くんの同期たち。各営業所に散らばっている彼らに一度に知らせるにはどうしたらいいだろう……そんな時に、同期の一人が結婚することを聞いたのだ。
「亮くん、私も二次会に行きたいなぁ。亮くんの友人なら私もお祝いしたいもの」
最初は気乗りしてなかった亮くんだけど、最後には了承してくれた。同期の結婚式なら南野咲桜も来るはず。若くて可愛い私とあの女の差を、亮くんにもみんなにも見せつけるチャンスだ。
亮くんにお金を半分出してもらって買ったピンクのフリルが可愛いワンピース。こんなの、二十九歳のデカ女には絶対に着られない。対決が待ち遠しくて前日はなかなか寝られなかったほどだ。
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