22 琴美視点②

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 そして当日。亮くんには二次会の会場で待つように言われていたけれど、ホテルへ向かった。  もしかしたら南野咲桜は二次会に行かないかもしれないから。私との違いを痛感したあの女の、絶望した顔を見逃すなんて勿体ない。  思った通り、人々が集まっているエントランスであの女は一人でクロークからコートを受け取っていた。やっぱりさっさと帰るつもりなんだ。逃がすもんか。 「あっ、南野さん! 二次会には行かないんですか?」  やめろよ琴美、と亮くんが止めたけど構わず言葉を続ける。おばさんが勘違いしてヨリを戻そうとしないようにここで叩きのめしておかないとね。 「同期の人のお祝いなんですから、一緒に行きましょうよ。私、元の彼女さんが一緒にいたって平気ですよ」  南野咲桜が振り向き何かを言おうとした時、突然背の高い男の人が後ろから現れて肩を抱いた。 「――せっかくだけど咲桜は俺と約束があるから無理だな」 (……何? このカッコいい人誰? めちゃくちゃ素敵……大人の男って感じ。何で、あの女の肩を抱いてるの)  甘い甘い微笑みで南野咲桜を見つめている。私は思わず疑問を声に出してしまった。 「南野さん、それ、誰?」  するとその人は鋭い目で私を睨み、咲桜の彼氏だが何か? と言った。 「嘘っ」  そんなことあるわけない。消費期限切れの二十九歳にこんな素敵な人が突然寄ってくるなんて、有り得ない。  だけどその人はあの女にまた微笑みかけ、愛おしそうに手を取って一緒にその場を離れて行った。
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