1 プロローグ

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 突然の大雨。傘を持っていなかった私は学校からの帰り道をずぶ濡れになりながら急いでいた。 (ああもうダメ、ちょっと休憩)  児童公園の東屋(あずまや)に飛び込み、ベンチに腰を下ろす。鞄の中身は濡れてないだろうか。こんな日に限ってタオルを持ってない。  髪からしずくを垂らしながら眼鏡を外して、まだ止みそうにない暗い空を見上げた。 「あれ、南野じゃん」  パシャリと音がして誰かが東屋に入ってきた。 「あ、藤森」  中一の時同じクラスだった藤森(そう)。席順が近くて話してるうちに友達になった。  今はバスケ部のエースでモテモテだけど、あの頃は私より背が低くて全然注目されてなかった。進級してクラスが別れてからはほとんど話す機会もなくなったから、ホントに久しぶりだ。 「なんだよ、びしょ濡れじゃねえか。ちょっと待て、これで拭け」  スポーツバッグからタオルを取り出して私の頭にバサっと被せた。 「きゃっ……びっくりしたぁ。いいの? 借りても。藤森も濡れてるじゃない」 「俺は鍛えてるからこれくらい平気。お前は運動不足なんだから風邪ひくだろ。早くきちんと拭けよ」  タオルの上から私の髪をワシャワシャって擦った。 「痛いってば、藤森! 自分でやるから」
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