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二・三度目の俺は死ぬほど人間を嫌っていた。
まあ当然だろう。二・三度目の人生で文字通り身も心も幼いまま、やれ人型になれ、やれ獣化しろなんて好き勝手命令されて、挙げ句は『私と盟約を交わせ』等々、人間たちに尊厳を踏みにじられまくったのだから。
転生しても魂は俺。
そりゃ聖人君子とは程遠い俺の魂ちゃんは、ブチ切れて人間嫌いになる一択だったよなー。
なんて、心の中で軽く愚痴ってみるも、気分の落ち込みは著しい。
というのも、二度目の人生と三度目の過去の記憶を思い出した影響か、今の俺も非っ常ーに、人間が嫌いである。
でも────俺は知っていた。
この後、そう待たずに別の人間が俺をここから連れ出す事や、それが今の俺にとっては間違いなく助けになるもので、しかし二度目の俺にとっては苦い記憶のひとつになった事も。
十八歳の精神が組み込まれた今の俺は多少落ち着いている。
しかし、俺を買った貴族の人間達は、相変わらず人の尊厳を踏み躙るように苦痛を与え、無理やり人化させ着飾り、獣化させては『鳴いてみろ』と宣い続ける。
────だから、さ。
多分、いろんなものが積み重なって、人生三度目の俺でもキツイものがあったんだろう。
「さわるな────っ!!」
────この日、助けに来てくれたはずの人間達を見て、俺が一番に向けたのは、紛れもない敵意だけだった。
二度目の人生で逃げる際に引き裂いた、あのキラキラと煌めく蜂蜜のような金色の目。
俺を見て見開かれるそれは、やはり二度目の人生と全く同じだった。
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