─第一章─初めまして、俺のハニーチョコレート

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「殿下、一度引き上げましょう」 「っ……だが」 「出直すだけです」 「…………」 「我々がここに居る限り、聖獣様は魔法を使い続けてしまいます。そして貴方にも、治療が必要です」 「…………わかった」  ────ああ……あの子が行っちゃう。  なんて、心の中で呟いてから一人首を傾げる。  早くどっか行けって、一人にしてくれって、思ってたくせに。その為にこうして苦しい思いもしてるくせに。  おかしいな。あのいつまでも優しい蜂蜜色の瞳のせいかな。  それとも、チョコレート色の甘そうな髪色のせいか。  俺、チョコ好きだったもんなー。  なんて。  はは……それは多分、流石に関係ねえや。 「────聖獣様、また来ます」  甘く優しい金の瞳に、ことさら真剣な色を乗せてハッキリとそう言った子供。  気付けば俺は『また来るんだ』なんて、憂鬱かあるいは期待か、自分でも判断に困るような言葉を心の中で呟いていた。  騎士たちが子供を連れて居なくなって、氷の魔法を解くと、どっと眠気が押し寄せた。  俺は張り付いていた壁を伝い、かつては割って逃げ出した出窓に登る。壁側の枠に持たれて窓の外、眼下に見える庭園を眺めれば、子供の瞳を彷彿とさせる鮮やかな黄色の花が咲き乱れていた。  はは……子供の癖に、腹立つくらい華やかな顔だったなぁ。  今日は色々あった。  助けに来たはずの子供や騎士に、髭の中年に威嚇して、今度は部屋に来た子供を傷付けた。  ……いや、俺威嚇しかしてないじゃん。  なんて後になって、何やってんだよ俺、って反省会をする事になるのはもう少しあとの話。  ────でも、これが俺とこいつの出会いだった。
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