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no-side────
その日、少年は美しい獣に出会った。
少年はその瞬間、血管がバクバクと脈打ち、心臓が痛みを訴えるのを感じた。視界は光で出来た金色のカーテンでも隔てられているかのように輝いて見えた。
恐らく少年にしか見えていないだろうその淡い光は、運命の相手を探し当てる光虎の力。
それは光虎の血を継いだ皇族だけが持つものだが、少年の名にかの国の皇族の証は無い。しかし、時折輝く金色の瞳は、かつて免罪で追放され平民と番い忘れられていったかの国の皇女の末裔である証。
少年の器に流れるは光虎と白狼の血。
そして、そこには懐かしい魂が宿っていた。
タンザナイトの双眸を持つ白銀の獣は気が付かない。
運命の相手に出会ったと自覚が出来たのは少年だけだった。
────ああ、やっと見つけた。
無意識に呟かれたそれは、誰の耳にも届かなかった。
少年が彼を手放す事はもう、二度とないだろう。
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