152人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
そんな訳で、俺は貴公子然としているどころかリアル皇子サンであるギルに綺麗だなんだと褒められると、なんとなーく複雑な気分にさせられるのだ。
だって、どう考えたってお前の方がキレイじゃんって。
そりゃ雪豹としての色は俺だって綺麗だとは思う。しかしその色を纏っているのは、困った事に俺である。その時点で俺としては減点必至だ。俺、自分の目つきの悪さに自覚を持ってるタイプの人種なんだ。
俺は元々上がり目だったし……って、そう考えると俺がネコ科動物(聖獣だけど)に転生したのってジャストフィットだったのかもしれないな。だって、もし俺がタレ目でネコ科だったら…………ん?
そこまで考えてハタ、と思考が一時停止する。
…………いや、待てよ。タレ目の雪豹とかめっちゃ可愛くね?
「……ぃ様、ルイ様?」
あー、くそー、俺タレ目が良かったー、なんて、何故自分はタレ目では無いのか、と項垂れるが、俺はそこでようやくギルに声をかけられていた事に気が付き、打ち付けていたしっぽもピタリと止める。
「ん?」
「大丈夫ですか?随分熱心に読んでいたようですけど……そんなに面白い内容だったんですか?」
「え?」
確か、題名は……『少年と気紛れな約束』だったっけ。
内容は少年と聖獣の約束の話だったな。笑えはしなかったけど……まあ、面白かった。
「あー……うん、そんなとこ」
「そう、ですか」
そう言って俺が本を閉じて灰色の布が張られた背表紙をすりっと撫でると、ギルは俺がさっきまで読んでいた本の表紙に書かれている題名をじっと見つめていた。
……ん?
ふと、近くまで来ていたギルの腕にしっぽが絡んでいるのが視界に入り、俺はさっきまで自分の見た目について考えていた事を思い出して、『ああそうだ、この耳としっぽは結構気に入ってるんだよなぁ』とか思った。
最初のコメントを投稿しよう!