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ふわふわで手触り最高である魅惑的な耳としっぽは俺も悪くないと思う。そりゃ、見ての通り感情がほぼ直結してるのは如何なものかと思うが、愛くるしさで言ったら満点か一歩手前だろう。
俺はそう結論付け、何事も無かったかのようにスっと背筋を伸ばし、ギルに随分と遅れてしまった返事をした。
「で、どうした?」
「そろそろ夕食にしましょう」
「?あれ、もうそんな時間か」
「はい。今日はクイーンビーの濃厚な蜂蜜を使ったパウンドケーキとラスクです。昨日、皇都近辺のアウラー森林にキラービーが巣を作っているのが発覚しまして────…」
ギルの説明も、途中からは右から左へ。
しっぽは勝手知ったる様子でぴんと立ち上がり、ついには気の早い事にふるふると既に喜びで震えだす始末。
まだ貰っても無いというのに、全く理性のないしっぽである。
「ギル」
「?はい」
「お前まじで綺麗だな」
「え?」
それ俺の大好きな蜂蜜じゃん、と言おうとした言葉は、何故かギルを褒めるものに変換されていた。心の中で考えていた事がまろびでてしまったようだ。
やっぱり俺の耳やしっぽがどれだけ魅惑的だろうと、宝石すらも眩むほどの甘味を持ってきてくれるギルの姿の方が、俺には断然輝いて見えた。あと、心做しか後光も見えた。
ちょろいとかじゃない。断じて違うから。これは単なる事実なんだ。本当にそう見えた。信じてほしい。
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