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以前より寒くなったせいか、相変わらず黄色い庭園の花達は淡い種類が増えている。
「……あのさ、今更なんだけど。俺ってここに居ていいのか?」
「もちろんです。どれだけでも居てくださって構いません」
そうは言うが、俺がここに来てから既に4ヶ月と少しが経っている。
この大して代わり映えはしないが安定した穏やかさを抱きつつける花園も、とうに見慣れてしまった。それを日に日に冷たくなる知らない風が吹き抜けて行った。
「あー、でもほら……俺、仕事もしてないし……これもうニートだろ」
正しくは15歳を超えた35歳までの人間の事を指すらしいが、肉体はどうあれ今の俺の精神年齢は転生分も含めれば、とっくに三十路を突き抜けている。いや、35歳も超えてる俺は、もはや立派な自宅専門のベテラン警備員である。ちなみにろくに警備した覚えはない。
寝て起きて飯食って、好きなだけ本読んで昼寝して、帰ってきた保護者に絡んでは、べらぼうに美味しい甘味を一緒に腹に入れ、そしてまたふっかふかの天蓋付きベッドで寝るという、なんとも自堕落な生活を満喫している。
……なんか、よく考えんでも今の俺って、とんでもないろくでなしだな。
「にー、と……?」
「あー……仕事もせずに食っちゃ寝してる奴の事」
「は?…………聖獣様が、穀潰しと……そう言いたいのですか?」
なにやらおっかない声が聞こえた気がして、一瞬えっと思ったものの、ぱっと目を向けた先にいるギルは悲しそうな顔をしていた。気の所為だったらしい。
事実だろうと言えば、余計に悲しそうな顔をするギルに、今度は俺が困ってしまった。いやだって、客観的に見なくたって俺は居候だぞ。それでもギルは、何もしなくたっていい、ただそばに居てくれればいいのだと言葉を重ねてくる。
だけど、その様子に何処か焦りを感じて訝しげに首を傾げれば、ギルは息を詰めて相変わらず綺麗に石の敷き詰められた地面に視線を落とした。
「僕はルイ様に……少しでもここを、居心地のいいものだと思って欲しかったんです」
思ってるよ。今だってこんなに楽しい。
「そうしたらルイ様はまだ、ここに居てくれる筈だから」
だって貴方は、とギルは躊躇ったように言葉を切った。
「────いつまでも……ここに居てくれる訳じゃないんですよね?」
途端、寂しそうな顔をしたギルに俺は思わず目を丸くした。
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