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「今、俺の魔力がお前の中を巡ってるはずだ。……それにお前のも一緒になってゆっくり流れてんの、わかる?」
「っ、……わかります」
「え、マジで?」
二度目の俺が聖獣神の元に還された際のことを思い出した。
『普通の人間が直ぐに感じるのは難しい』
俺が回帰するまでの短い時間の中で、おやじがざっくりとだが魔法の説明をしてくれた時、確かにそう言っていたはずだ。
こんなに早く感じ取れるものなのか……?
ギルってもしかして才能ある?俺の友達めっちゃ凄くね?
「へぇ……すげぇな。どんな感じなんだ?」
「温かくて、優しい……まるでルイ様にゆっくりと焦らすように撫でられているかのような」
「ん? …………えっ、と……何て?」
なんていうか、発言が如何わし……あ、いや、恥ずかしい言い方、だよな。
言われた俺は恥ずかしいのに、言った方のギルは恥ずかしくないのか? などと若干納得のいかない心境にさせられたが……とりあえずそれはその辺に置いておくとして、今はギルに魔力を感じさせる事に集中する。
「あー……じゃ、そのままソレ……俺の事、魔力で追いかけて」
「魔力で追いかける……分かりました」
その後も俺の言う通りに魔力を動かし続けたギルは……この時点で既に魔力制御の精度もおかしかったんだけど、魔力切れを起こすことも無くまずは難なく小さな火を起こして見せた。
しかし、そこからが更におかしかった。何故か初級魔法を暫く出しっぱなしにして考え込んでいたはずのギルがひとつ頷いた直後にしれっと中級魔法に切り替えた所から、流石の俺も「ん……?」と思い始めた。ギルはその後も数秒静止すると、何やらブツブツ呟くなり何故か上級魔法をあっさりと。
そして一番とんでもないのはここから。
この人「なるほど、面白いですね」とか言って、水や風、土どころか、珍しいはずの光に闇属性まで、それはもう勝手がわかった途端にぽんぽん、ぽんぽんと……なお、その間俺は絶句していた。
追記するなら、ギルから発動されるそれらはすべてが上級魔法だった。まてまてまて、どうなってんだ。
「流石に氷魔法は無理ですか……残念です」
「いや……いやいやいや」
「ん?」
「いやおま、おまそ、そ、チ────」
「え? 血?」
お、お前それ……チートじゃないのか……?
なんでお前が持ってんの?? とか、そういうのって普通転生者が持ってるもんじゃねえの? だとか、一瞬にしてさまざまな疑問が俺の中を駆け巡った。……多分まず突っ込むべきはそこでは無いだろうが、転生したのにポンコツみが拭えない俺としてはやや複雑なものがある。
まさか、一日と経たずに俺の先生としての存在意義が無くなるとは……
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