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「これ以上はお互いにとって良くないと思うんだ……」
「どうしてそんなこと言うの?」
「でも……君だって気付いているんだろう?」
「知らない」
自分でも口から出たセリフに耳を塞ぎたくなった。
真央の逃げ場をなくすような一言。
黒く大きな瞳がゆらりと揺れたように見えた。
「そんなこと言わないで。何事にも終わりってあるものなんだ」
「やだ。まだやり直せるもん」
そうだったらどれだけ良いか。
それで、何かが変わるなら、僕だって嬉しい。
だけど、そんなに現実と言うのは甘いものじゃない。
「そう言って、何回やり直した? もうすぐ十回……ぐらいかな?」
「……まだ、九回だもん」
「……ごめん。でも、結局のところさ……」
「言わないで!!」
初めて彼女が僕を見た。
その瞳の深い黒色に、僕の心は思わず揺らぎそうになる。
だが、その気持ちを押し殺し、僕は言葉を続けた。
「……駄目だよ。やっぱりこれ以上は無理だ」
「そんな!!」
真央の口から出た言葉は悲鳴に近かった。
目を閉じ、深い息を一つ。
気持ちをどうにか整え、僕は最後の一言を口にした。
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