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プロローグ
それは幼い頃からおじいさまに教えられてきたこと。
「良いかい、リリア。右眼に黄緑の橄欖石、左眼に黄水晶を持つ黒髪の一族を決して許してはならないよ」
「はい、おじいさま」
「奴等の一族はベニーという。嘘や策略でお前の両親を殺めた恐ろしい一族だ。お前のこともきっと悪いようにしてしまうに違いない」
この世界の怖いこと、恐ろしいことは全部おじいさまから伺いました。妖精は弱く、生きるためには危険から身を守らなければならないのです。わたくしたちは霧が立ち込めるこの湖に隠れて住んでいます。
けれど、おじいさまはある日突然消えてしまいました。
この小さな湖の家にはわたくし一人だけ。残された教えだけがわたくしを何年もこの地に縛りつけます。
『好奇心に惑わされてはダメだ。心を固く閉ざしなさい』
それはおじいさまとの約束だったのに。
ある日、わたくしは冬の湖に倒れていた人間を拾ったのです。黒水晶のような真っ黒な髪をした、わたくしと同じぐらいの大きさの小さな少年です。
「なんてひどい怪我。それにこの水温の中。このままでは死んでしまうでしょう」
それがわたくしーー宝石の妖精リアトリリア=ズウェルの危機に繋がるなんて知りもせずに。
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