春が近づく

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♡♡♡  久しぶりにきちんと見た麦は、相変わらず私のヒーローだ。すらっとした背丈に、首元に巻かれた水色のマフラーがカッコいい。 「久しぶり」 「さくら、なんかすごい変わったね」 「見てもらいたい人がいたから」  素直に言葉に出してみたら、どんどん熱が上がって行く。照れ臭くなって、誤魔化してお菓子を見る。 「可愛いカップルさんだね」  お店のおばあちゃんが、私と麦を見てそんなことを呟いた。手をぶんぶん振って否定すれば、麦が悲しそうな目をしていた。 「ちが、ちがうんです。幼馴染で。この人には彼女がいますし」 「もう別れたよ」 「えっ?」 「なんか、想像と違ったって」  とくんっと胸が脈を打つ。バクバクと心拍数が上がってるのは、叶うかもという期待なのか。それとも、麦の儚い横顔が好きすぎるせいなのか。  どちらなのか分からないけれど、すきすきすき、と音を上げてるような気がする。 「あのね、麦に話したいことがあるの」 「うん、さくらが変わった理由かな?」 「私が変わった理由、だよ」  頷いて、麦の右手を取る。麦の目を見れば、口から内臓が飛び出しそうだった。チョコレートの箱を差し出しながら、震える手で麦の手に乗せる。 「私は、麦が好き。転校してきた時から、声を掛けてくれた麦は私のヒーローだったの。だから、麦のヒロインになりたい。私が麦のヒロインで居たい。弱ってるところに付け込むみたいだけど、それでも、麦が本当に好きなことは変わらないから私と、付き合ってくれませんか」
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