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人付き合いの息の根を止めるのなんて、簡単だ。
何もわざわざ、強い言葉を使う必要はない。人は何かを伝える時、言葉以上に、それ以外でないところを使っている。例えば表情や仕草、声の高低などである。
ありがとう、でも、ごめん。しばらく忙しくて。
これだけの言葉を言う時も、面倒臭いんです、出来ればもう二度と話しかけないでください、という感情をできるだけ伝えられるよう工夫する。カラオケに行こう、と非常に珍しく誘ってきたクラスメイトに対して、やや身を遠ざけてみる。ああ、こいつ、俺のこと避けてるぞ、と相手に思わせられたら勝利であり、今回は上手くいったことが彼の表情から読み取れた。
「ああ、そう、ごめんな。また別の機会に誘うわ」
うん、ごめん。僕は口先だけ謝る。これでこいつは上手くいけば二度と話しかけてこない。目の前のクラスメイトが今言った、また、は来ないことが多い。一度拒絶された人間に再び声をかけるのは、少しばかり勇気がいる。たとえ表面上、どれだけ明るく振舞っている奴でも、その勇気を振り絞るぐらいなら、別の誰かを誘うことになる。
これで、始まりかけていたコミュニケーションが、世界から1つ消えた。それがいいことなのかどうなのかは、分からないが、少なくとも今は気が楽だ。
学校を出て家に帰り、手洗い、うがい、着替えを済ませ、僕はいつものようにベッド脇に置いていたイヤーマフを手に取る。
照明はあえてつけていない暗い部屋の中、イヤーマフを装着して、ベッドの中に入る。外界からの音が完全とは言わないまでも、かなり遮断され、静けさを確保する。今、インターホンを鳴らされたら、気づけないかもしれないぐらいには、静かだ。
空想の中で好きな漫画の世界に自分を投入させてみる。もちろん自分のスペックはかなり高めにしておく。今の僕がそのまま過酷な世界に入ったら、抵抗虚しく殺されて仕舞いだ。だから、せめて銃ぐらいは持たせておく。
銃にしたって、この細腕では満足に扱えないだろうけど。しょぼい現実なんて、妄想では忘れるべきだ。
しばらくぼんやりと想像の世界に自分をたゆたわせて、頃合を見計らってリビングへと向かう。いつも通りの時間に夕ご飯は出来上がっていて、今日は僕の好きなハンバーグだった。でも、何だか心がへたっていて、そのことに対してあまり喜びの感情を抱けない。
母親のおいしいか、まずいかの質問に対して、おいしい、とだけ答える。たとえどんなにまずくてもおいしいと答えるしかないので、この質問を向けられるのはあまり好きではない。
テレビはニュースを流していて、介護職員の減少と、どんどん増える後期高齢者によって、介護難民が大量に発生していると伝えている。
「嫌やね。うちもお婆ちゃん、ボケたらどうしようか?」
母のその言葉に対して、僕は上手い返答が思いつかないので、黙っておく。ヤングケアラー。父は仕事で毎日夜遅いし、母もパートを始めているので、その場合、介護は僕がするのだろう。でもここで僕がやるしかないんだよね、と言ったら、角が立ちそうな気がした。
アナウンサーはしきりに政府に対して文句を言っている。独居老人の孤独死を減らすべき、補助をすべき、もっと頑張るべき。バーカ。僕は心の中でそう呟く。政府にばっかり文句を言って、自分は何もしないのだったら、文句を言う資格はないだろう。
何の責任も痛みも背負うつもりがない、綺麗ごとを聞いているとむかむかして、食欲が減退する。それでもここでハンバーグを残すと、母に無駄に心配されると思い、僕は少しだけ無理をして、胃の中にそれをねじ込む。ご馳走様、と言い、食後のお茶を飲んだ後、普段と同じぐらいのタイミングで自分の部屋に戻る。
習慣的にスマホの画面を見る。SNSに着信が来ていて、僕は無警戒にそれをタップしてしまう。おいおい、気をつけろよ、と自分に対して呆れながらも着信内容を確認する。修学旅行の時の写真がクラスのグループに投稿されていた。
投稿した奴が上原で、心が沈む。こいつの名前なんて見たくもなかった。
僕はスマホを机に置いた後、再びイヤーマフをつけて、ぼんやりする。でも今度は上手く空想の世界に入れない。まごまごしている内に風呂に入る時間になり、その風呂の中ですら気持ちは千々に乱れて、落ち着くことがない。
脳裏をよぎり続けるのは中学時代のこと。皆が1人の男子生徒をあざ笑った時の記憶。何のことはない。ただちょっと体育祭の時にノリの悪い行動を、そいつがとっただけだ。でも、クラス内の皆、生贄が欲しかった。受験のストレスが溜まっていたから、自分より下の存在を作った。そいつを見下して少しでも自分が上等な存在だと思えるのなら、誰でもよかった。
無視。廊下での通行妨害。異様に威圧的な態度を取る。
そんなような、いじめとしてはよくあることが、その男子生徒を襲った。恐喝や暴行は流石になかったが、それでも相当に厳しかった筈だ。気を強くもつなんて、できるわけもない。隣にいる人間が自分のことを傷つけるかもしれない、というのはそれだけでストレスで、消耗していたのが見て取れた。
最後の最後には、教室中の人間がゲーム感覚で彼を無視し、あざ笑った。彼の言葉を、助けを求める視線を、びくびくとした仕草をある種の快楽と共に見つめていたとすら言える。そのあたりで流石に事態に気づいた担任教師が、LHRの時にキレて、事態は一気に沈静化したのだが、あまりにも遅すぎた。
いじめの中核メンバーだった上原が、衆人環視のもと泣いて謝ったところで、一度受けた彼の傷が癒えるはずもない。その涙が、他ならぬ上原自身を守るためのものだと傍目にも分かるのだから、尚更だ。結局謝らないとクラス内での自分の立場が弱くなるから、わが身可愛さで謝っているだけ。絶望がより深まりさえしただろう。
卒業前に微妙な抵抗感を覚えながら、僕が彼に謝った時、
「君はほとんどいじめてこなかっただろう。謝らなくていいよ」
と彼は言ったが、その瞳に他人への絶望、失望があったのはバカな僕でも流石に分かって、今思えばこの時初めて、彼の見ていた世界の一部を僕は理解することができたのだ。
目を開ける。まだ夜中だ。イヤーマフをつけながらいつの間にか眠ってしまったらしい。腰に痛みを覚えて、この痛みによって起こされたのだと気づく。イヤーマフがもたらす、普段はない違和感を誤魔化すために、無理な姿勢で眠っていた。何とかかんとか立ち上がって時計を見ると、まだ午前1時だった。
何となくそのまま眠る気にもなれず、部屋を出てキッチンへと移動する。
流し台の上にある、小さい電気だけをつけて、なるべく音を立てないように、戸棚からコップを出す。水を注ぎ、勢いよく体の中に流し込む。
「大輔」
いきなり声をかけられたので、思わず僕はびくっと身を震わせる。声が発された方向を見ると、父がいた。
「まだ起きてたのか?」
「いや、さっきまで寝てたんだけど、ちょっと喉乾いちゃって」
「そうか」
俺にも水をくれ、と父が言うので、僕はもう1つコップを取り出して水を注ぐ。
「学校はどうだ?」
「まあまあ。成績表は渡してるはずだけど」
「成績の話だけじゃなくてだな。友達とかはいるのか?」
「…いないよ」
しばらく無言。この後の父の発言が何となく予想がついた。すぐにここから逃げ出したかった。でも、逃げ出すための口実を用意する暇はなかった。
「友達はいいぞ。父さんは未だに高校時代の部活仲間とは会っている。まあ、こいつはえらく出世して、会うたびに微妙に惨めになるんだがな」
それもそれで、人生の妙味だ、父は明らかに装っていることが分かる軽口で言葉を紡ぐ。
「クラスの人間に馴染めないんだったら、部活にでも入ったらどうだ? チームで活動できる、そうだな、サッカーとか」
「うん、考えておくよ。…明日も平日だから、今日はもう寝るね」
僕はやや無理やりながらも、それっぽい理由をつけて会話を打ち切る。父との会話を打ち切ることに罪悪感があった。続けるべきではないのか、何かやらかしてしまったのではないか、という僅かな恐怖があった。でも、お互いに明日も会社と学校はあるのだから、抵抗が来ないのも分かっていた。
そうだな、俺ももう寝るか。父はそう言って僕と同じタイミングでキッチンから出て、寝室へと戻っていく。
部屋に入るとすぐにイヤーマフをつけた。鬱陶しかった。父の言葉の背後にある意図は、はっきりと分かった。そのことが辛さを増していた。
そんな父との1件がずっと頭に残ったまま、1日を過ごしていたものだから、思わぬアクシデントが発生した。古典の課題のプリントを学校に置き忘れた。
既に時計は17時を回っていて、あと少しで夕ご飯の時間。翌日学校に早く行ってやればよい、とは思ったが、結構量のある課題であり、かつ、早起きができる可能性はそれほど高くないので、母に事情を告げてから、もう一度学校に向かった。到着して、もうほとんどの生徒がいなくなっているのであろう校舎を見ると、何故だかぞっとする。今更、学校の怪談を信じているわけではないが、人が少なくなっている校舎はやはりそれなりに不気味だ。
普段見ている時の状態と違っているから不気味に感じているのか、だとしたらこの不気味さはただの違和感から来るものなのか、そんなことをつらつら考えながら、教室の前まで移動し、ドアを開けようとしたら鍵がかかっていた。
「閉めるにはまだ早いだろう…」
ぼそっと文句を言った後、職員室に向かう。流石にここにはまだ光が灯っており、担任教師の犬飼もいた。後ろからやや腹の出ている中年男に声をかけると、物珍しいものを見たような顔をされる。まあ、自分は帰宅部なので、この時間帯までいるのは確かにおかしいのだが。
「どうした、三島」
「教室の鍵をくれませんか? 忘れ物してしまって」
「…おお、分かった。でもその前にちょっといいか?」
こんなことを言われると、何となく嫌な予感がする。別に何もやましいことはしてないはずだが。
「すまん。言い方が悪かった。特に何か注意したいわけじゃないんだ。世間話みたいなものをしたくてな」
「…はあ」
ため息にも似た、僕の返答をイエスと受け取ったようで犬飼は立ち上がって、奥の教師専用の休憩室へと向かう。後をついていく。部屋の中は、大分上手く消しているが、ややタバコ臭かった。
「何か飲むか?」
自動販売機の前で、そう聞いてきたので、オレンジジュースを所望する。犬飼がちゃりん、ちゃりんと硬貨を入れていく。父の会社では福利厚生で無料、という話を聞いたことがあるので、我が校の校長はもしかしたらケチなのかもしれない。
犬飼はオレンジジュースを僕に渡しつつ、自分用に缶コーヒーも買う。2人で用意されていた椅子に、テーブルを挟んで座る。
「それで、話というのは何ですか?」
2人でプルタブを開けながら、とりあえず一言目を放つ。
「あれだ。まあ、大した話ではないんだが」
そう言いながら犬飼は自分の買った缶コーヒーを一口飲む。
「学校は楽しいか?」
「…普通ですね」
「普通か」
そこでまた犬飼はコーヒーを口に含む。会話の行く先がまるで読めない。とりあえず僕もジュースを口に含んでおく。犬飼は少し考えていたようだが、自分の中で方針を決め終わったのか、口を再度開く。
「正直言おう。何と言うか、お前がクラスから孤立しているような感じがしてな」
「そういう話なんですね」
「ああ、そういう話。上原も少し気にしてる」
こめかみあたりが少し震えたのを感じた。犬飼が気づいていなさそうなのは幸いだった。
「まあ、彼女、学級委員長ですしね」
別に上原の性根がまともになったわけではない。単純に内申点目的だろう。クラスの和を守ろうと、委員長として尽力した。犬飼に多分そう書かせたいのだろう。
「何とも他人事のような反応だな」
犬飼ははぁっとため息をつく。ため息をつかれるのは、自分が悪くないと分かっていても、結構辛い。
「別に友達100人とか言うつもりはない。小学生扱いをするつもりもない。だがな、俺が見るにお前は、他人と一緒にいるのが本当は好きなタイプだ。中学まではそれなりに友人がいたとも上原が言っていた」
あいつ、余計なことを。想像の中で上原にビンタしておく。
「心境の変化なんて誰にだって起こりうるじゃないですか」
「確かにそうだ。だが、お前がしているのは変化ではなくて、我慢のような気がする。そうじゃなければそんな死んだような顔はしていない。自覚はしていないだろうが、ひどい顔になっているんだ、お前は」
「顔がひどいのは生まれつきですよ」
「そういう話じゃあない」
犬飼は僕のボケに、ふっと笑顔を浮かべる。だが、その笑顔は一瞬のものだ。
「いるべきところ、自分が身を置くべきところに身を置けていない。そんな風に考えている生徒特有の、どこか閉じた表情だ。何を危惧しているか、言っておこう。俺はお前が、学校をやめるんじゃないか、と危惧している」
「…」
言い返そうと思えば言い返せた。妄想ですよ、とか、バカにしないでください、とかも有効だっただろう。でも犬飼の声音はそんな反論をさせないほど真剣だったし、何より僕は何度も学校をやめたいと思っていたので、完全に図星だった。
「何があったのかは知らんし、もしかしたらお前にとって必要だから、そういう閉じた態度を取っているのかもしれん。だが、もう少し自分を大切にしろ。気の置けない奴が身近にいる楽しさを、お前は知っているはずだ。大丈夫だ。皆、お前を心の底では心配している。今からでは人間関係の構築は難しいかもしれないが、不可能ではないはずだ」
「少し、待ってくれますか」
僕はそう言って、しばらくの間、考えをまとめる時間を貰う。
犬飼は立派な教師だ。
こんな風に時間を取ってくれて、義務でも何でもない説教までしてくれて。
塾の先生だったらこうはいかない。成績だけではなく、人間性も見ている学校の教師だからこそ、ここまで言ってくれる。それはありがたい。
だが犬飼の説教は残念ながら芯を外している。そして、恐らく彼は芯に当てるよう工夫することもできない。
ならばこの会話に意味はない。切る。適当な理由でいいから、終わらせてしまおう。
「結局のところ、コミュニケーションって、コストがかかるじゃないですか」
「何だそれは?」
「あれですよ。感情とか、表情とか、言葉選びとか、そんなもん、コミュニケーションしていたら工夫がいりますよね」
「…だからどうした?」
「何でそんなコスト、敵か味方かも分からない他人に対して、支払わなきゃならないんですか?」
「それぐらい何だ? 俺なんて、残業代も出ないのにこれから小テストの採点だぞ」
コストのことを言うなら、それこそコストだわ。犬飼がぼやく。でもその問題と単純比較されても困る。組合にでも頼ってほしい。
「いいからもう少し、頑張ってみろよ」
「…はぁい」
最後まで何かずれているな、と感じたので、あえて、やる気なさげに僕は答える。このコミュニケーションを、せめて今だけでも切るために。犬飼はその雰囲気を察したのか、微妙に苦い表情をする。
「…お前ちっとも分かってないだろう」
「放っておいてください。母がそろそろ夕飯の準備をしているはずなので、鍵をいただけますか」
そう言うと、犬飼は、降参だ、という風に肩をすくめた後、離席する。休憩室から出ていったが、さほど時間を置かずに鍵を持って帰ってきた。
「最近の生徒はお前に限らず糠に釘の、暖簾に腕押しだよ。霞に斬りかかっているような気持ちだ。やってられん。今の時代が良くないのかもしれんがな」
僕と犬飼はそれぞれ自分の飲み物を飲み干した。
闇に包まれ始めた教室は、外から見た校舎よりもぞっとする。慌てて電気をつける。背中の方が意味もなく気持ち悪い。後ろに誰か立っているのではないかとすら思う。
「バカバカしい」
僕は怯える自分に言い聞かせ、ずんずんと自分の席へと近づいていく。プリントは苦もなく見つけることができた。雑然と入れていたから、端っこの方がよれている。
昔のようにしわくちゃになっていないだけましか。中学時代まで自他共に認めるずぼらだったので、本当に原形を留めた形で提出できたのは半分もなかったのだ。それを考えるとこれは進歩だ。
さあ、帰ろうと教室の入り口の方を見る。その見る過程において、上原の席が目に入った。
物凄い怒りが、明らかに上原だけに向けるべきではない類の怒りが、唐突に僕の中に湧いてきて、自分でも驚く。体が震える。筋肉が熱くなる。
昨夜の父の発言は、僕を大樹の陰に寄せるためのものだった。スポーツをやっていた父は、就職先を中学時代からの部活の先輩に用意してもらった、と悪びれもせずに言うことがあった。
中学の時に起きていたいじめは、教師に怒られるまでは全員が見て見ぬふりだった。怖かった。僕も、怖かった。怖いから何もしないというのは悪なのだが、人間誰しも自分が痛い目を見るのは避けたいのだ。結局、弱い者の側に寄り添いたくなかった。
上原はいじめを一時期主導していたが、特に何も別個に怒られている素振りもなかった。怒られた次の日ぐらいは大人しかったが、1週間後には元通りだった。
結局、世の中はゴミだ。
苦し紛れ気味に犬飼に対して言ったコストと言う言葉だが、今更ながらしっくり来る。ゴミを手に入れるために、何かをする気には残念ながらなれない。
怒りが中々冷めなかったので、上原の席に近寄り、蹴っ飛ばしてやろうかとさえ思った。でもそれは八つ当たり過ぎると自分でも判断がついたので、自制する。
うん、分かる。流石の僕だって、高校生にもなれば分かるのだ。
人は正義なんて追い求めていない。結局本質は力だけだ、ということ。
強いものに付き従い、痛い目を見ずに頑張ろうとする態度は生物として至極当たり前のことで、醜悪に見える方がむしろおかしいのかもしれない。その醜悪さが自分にも宿っているのは、ショックだが。
この醜さを、いじめられていた米内の視線が僕に教えて以来、僕は人の言うことを頭から信じられなくなった。だってそうだろう? 結局は何もかも力で決めて、正しさへ歩んでいこうともしないのが人間の本性だとしたら、他人と接点を持つのなんてむしろ危険なことでさえあると思う。
そんな考えに凝り固まってしまい、ある時、気がついたら僕はネットショッピングで安物のイヤーマフを購入していた。思えばせめて音の面からだけでも、逃げ出したかったのだろう。
ふぅ、と息を整えながら、思考を現在に戻す。こんなところにいつまでもいるわけにはいかない。犬飼だっていつまでも学校にいるわけではないだろうから、早めに鍵を返しに行かねばならない。この静けさに満ちた教室にも慣れ、どちらかと言うと世界に自分が1人だけになったような心地よささえ覚えているのだが、早く行こう。
電気を消し、教室の鍵を閉める。廊下が暗い。あと少しで完璧に闇に覆われるのだろう。
帰ったらイヤーマフをすぐにつけよう。そして世界に対して耳を貸さなくしよう。それは孤立の道で恐らく間違っていることなのだろうけど、今の僕がこうである限り、仕方のないことと割り切るしかないのだ。
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