雨が止んだら

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 崖の下からひょっこりと顔を出すのは童子だ。  人に似た出で立ちこそしているが、その背からは鳶に似た色の翼が生え、空を自由に飛び回る。  所謂有翼類と呼ばれる種族で、似ていても人ではない。  栗色の短く刈られた毛並みの下から覗く笑顔が人のそれであっても、手脚は猛禽類のそれだ。  鹿によく似た原生生物の皮で出来た民族衣装を身に纏う彼女は、鋭い爪が生えた手で一気に崖から這い上がる。 「ここには来るなと何度も言うておろう、鳥の子の娘よ。落ちたらどうするつもりだ」 「えー。だって村のオトナ達はみんな忙しそうで暇なんだもん。落ちたって翼があるから平気だし!」 「有鳥類とはいえ、お前にこの高さから真っ逆さまに落ちて浮き上がるだけの力はあるまい。魔の血がもう少し強ければ別だが、お前は人の血が強い。身の程を弁えろ」  鳥の子の娘は図星なのか唇を尖らせる。  私はふん、と鼻を鳴らした。ぶしゅぅっ、と鼻周りの苔が散る。 「友達もおらんのか、寂しい奴め」 「そんなことはないよ。友達沢山いるもん」  鳥の子の娘は唇を尖らせた。 「ならばそやつらと遊べば良い事。ここはそなたの来る場所ではない」
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