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「モコさんっ!いやぁ〜、本当にごめん!!かなり遅れてしまって!!」
タカさんが男湯に入って行ってしまってから1時間近く。カツさんがようやく満縁湯にやって来た。走ってきたのだろうか、顔は大量の汗が滝のように流れていた。
いつもなら陽気に挨拶を交わすが、今日はそんな気分になれなかった。
「タカさんは?先入っちゃった?」
「カツさん、今から時間ある?風呂入る前に、ちょっと2階で話そう」
怒っていると思われたくなくて、出来るだけ冷静に言ったが、カツさんに対しての不信感が多すぎて自然と顔が強張ってしまった。
「モコさん…連絡無しにかなり遅れてごめん!」
2階の食事処の席に着くやいなや、カツさんはモコさんに深々と頭を下げた。
「…カツさん、俺は別に怒っていないよ。…ただ、呆れているとうか、カツさんの考えていることが分からないから悩んでいるんだ」
「……」
「最近どうしたの?グループLINEで待ち合わせの約束をしても、当日には連絡無しの遅刻をする事が増えたし。それも今日で何回目?タケさん、今日俺らに話したい事があったらしいけど、夜勤があるから先に入ったけど、結構怒ってる様子だったよ」
「……」
「カツさん、俺やタケさんはカツさんに何か失礼なこと言ったりした?それまで、俺らは仲間だと思ってたのに、いきなり連絡無しの遅刻が多くなってさ、もしかしたら、俺やタケさんが気付かない内にカツさんが傷付くような事を言ってたのかなって…」
「そんなんじゃないよ!」
それまで俯きながらモコさんの言葉を受けていたカツさんが初めて顔を上げて否定した。
モコさんはカツさんの意外な言葉に驚きつつも、一呼吸置くと話を続けた。
「…だったら、話してくれないかな?連絡無しの遅刻が続いている理由を。タケさんだってその理由が分からないから怒っている訳で。理由が分れば納得すると思うんだ。カツさんが言いにくいなら、俺から後で話しておくから」
モコさんは俯くカツさんから視線を逸らす事なく、しっかり訴えてきた。タケさんと同じく普段かはあまり強く言わないモコさんの勢いもあり、カツさん暫く考えた後、ゆっくりと顔を上げ、モコさんを真っ直ぐ見てきた。
「…モコさん、今日まで2人には迷惑かけてごめん。ちゃんと話さなきゃとは思ってたんだけど、中々タイミングが無くて」
カツさんは申し訳ないという表情でモコさんに連絡無しの遅刻の理由を話し始めた。
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