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〈ゴンドア〉と呼ばれる大陸があった。
魔物、侵略、災害、兇賊……この大陸に於いて命を脅かすものは、様々な形で襲い来る。
跳梁跋扈する恐怖を克服すべく、かつて繁栄を極め、そして滅んだ、現在は〈前文明〉と呼ばれる往事渺茫の彼方に消えた超科学文明の遺産を頼り、掘り返し、または[魔術]や〈火薬〉と云った代価品を作り上げ、生き延びる人々……
彼等人間達は再びこの世の主役に返り咲き、やがて〈飛龍〉と呼ばれる幻獣を駆使し、それらが失われると、今度は〈鉄甲騎〉と称する巨大な機械の騎士を繰り出し、それらをこれまた巨大な飛空船に載せ、大なり小なり戦いに明け暮れる……
そんな中、自らの身を立てるべく戦場へと赴く若者がいた……
西方の大国〈クメーラ王国〉――
その南の端にある田舎の小さな山村を統べる小領主の家で生まれたその若者こそ、ジルフリード・グルムバッハである。
領主の子息である以上、彼もまた貴族の出ではある。ただ、暮らすに困りはしない程度の貧乏領であり、その上、ジルフリードは三番目の息子であった……
三男坊故に、受け継ぐべき土地も、分け与えられる財産もありはしない。
何年か前より再編されつつある国軍に入隊する道も父より勧められたが、乗り気だった次男に対してジルフリードはそれを断った。
めでたく入隊することになれば、おそらく乗せられることになるであろう国軍主力の鉄甲騎〈ガイシュ〉……その甲虫みたいな見た目が「気に入らない」のも理由の一つであるが……
「俺は誰にも縛られるつもりはない」
と、彼自身、幼少から反骨精神が強いところも確かであり、その上、父が気まぐれに招いた偏屈者の老いた占い師との対話……
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