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その後はバタバタだった。一番驚いたのは桐谷が亡くなっていなかったことだ。あいつは消えたと言っていたが桐谷はひたすら待ち続けたのだ。精神的に弱っていて抵抗する力はなくなっていたが。
病院で手当てを受けていた桐谷は涙を流しながら二人に礼を言い、後日きちんと挨拶をしたいと言っていた。
特に警察に知らせる必要もないし信じてもらえないと思うので市役所内で橋本が武勇伝のように語った、もちろん誰も信じなかったが。橋本が言えばそういうキャラだからと軽く流してもらえるだろうという工藤の案だ。
桐谷が回復すればおそらく町おこしに島を貸してもらえると思う。本格的にプロジェクトが始動したことに対して市役所メンバーは毎日生き生きと仕事をしている。
今日も会議が終わり、橋本が「漏れる!」と言いながら会議室を出て行った。おそらくインスリン注射だろう。
「そういえば橋本って東大出身だったんですね。知りませんでした、そういう話したことないから」
残っていた上司に工藤がそう聞くと上司はブッと吹き出す。
「東山大工専門学校、な。大卒の工藤と同期で入ったのは二回留年してるからだ」
それを聞いて工藤は無言のまま会議室を出た。そしてどこか遠くから「いってえ!」という橋本の叫びが聞こえてきたのだった。
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