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島に到着して早速桐谷が島を案内するために先陣を切って歩き始める。確かに雑草がだいぶ伸びているが、桐谷が歩いているルートは一応道らしい痕跡があった。
「キャンプをするにはちょっと草刈りしないと無理だね。だいぶ自然が多いから自然探索とかにはもってこいだと思うけど」
「砂浜も綺麗だったし海水浴も問題なさそうだな」
冷静に周囲を観察しながら進んでいると、桐谷は足を止めた。目の前には風穴のような洞窟があった。
「この中は人が歩けるくらいの広さがある。宝探しゲームとか面白いんじゃないかね」
「確かに。足元が危なくないならそれもありですね」
「じゃあここもちょっと見ていってくれるかね」
桐谷は懐中電灯を取り出すと中を照らしながら歩いていく。
「小さいLEDランタンをたくさんおけば足元は見えるし、普通に綺麗なんじゃないかな。今はカメラの機能結構凄いしSNSにあげてもらったら話題作りにもなるかもね」
「SNSってのはなんだい」
「ソーシャルネット……」
「一般人がタダで宣伝しまくってくれる便利な秘密道具です!」
工藤の言葉を遮って橋本がドヤ顔で説明する。桐谷はなるほど、と一応納得したようだ。確かにお年寄りにはその説明の方がわかりやすい。
「やっぱり宝探しゲームだろ、こういう暗くて狭いところに入るの男は大好きだ」
「橋本が好きなだけだろそれ」
そんな会話をしながら進んでいくと桐谷が「おや」と言った。なんだろうと思うと行き止まりにたどり着いたようだが、懐中電灯で何かを照らしている。
「前に来た時はあんな物なかったんだが」
近寄って見てみればそれは石板のようだ。三十センチメートル四方ほどの大きさで碁盤くらいの厚みがある。そして表面には何か文字のようなものが刻まれていた。
「なんだこりゃ、マジで石板じゃん」
「文字っぽいけど、見たことない文字だ。漢文とは違うし、なんだろ」
市役所は研究者などの知り合いも多い。他の市役所との連携もしているので誰か詳しい人がいるかもしれないと、工藤はスマートフォンで写真を撮る。洞窟の中では送信ができないのでとりあえず撮るだけだ。橋本はワクワクした様子で工藤に話しかける。
「もしかして俺たち、今世紀の大発見をしてるんじゃないのか」
「どうだろう。こういうのって捏造する人も多いし。前来た時はなかったんですよね?」
桐谷を振り返ろうとした時だった。隣にいた橋本が突然吹き飛んで洞窟の壁に叩きつけられた。何が起きたのか分からずにいると工藤も後ろからすごい力で石板の上に叩きつけられていた。
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