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今までの言動から大量にヒントをもらった、わからない方が馬鹿だ。無表情となったそれに工藤は鼻で笑いながら畳み掛ける。
「お前がどこの誰かなんて興味ないからどうでもいいけど。不幸自慢したいのはどの時代のやつも一緒なんだな、笑える。本当に不幸だったら口にするのも嫌だからしゃべったりしないもんだよ、自分が惨めになる」
自分の体が大嫌いだった。人に馬鹿にされるよりも同情される方が苛々した。何かあった時のために上司には伝えておかなければいけなかったから話したが、職場で他の人には話したことがなかった。もちろん橋本にもだ。
だが一度だけ橋本の前で貧血で倒れてしまったことがあり、上司がこいつには話しておいたほうがいいだろうと教えることを勧めてきた。常に二人セットなのは橋本の暴走を止めるだけではない。工藤に何かあったら橋本が助けられるようにだ。検査結果が悪かったら洗いざらいはきやがれと言われていたのでこの間の検査の結果も伝えてあった。
救いだったのは、橋本は絶対に同情してこないし労りの言葉もかけてこないことだった。最初こそおもりをされるようで嫌だったが、おもりをしないどころか良い意味で無神経だった。
お前胃が半分しかないんだから高級なもん食べまくれるじゃねえか、焼肉食いに行くぞと言ってくるくらいだ。それがとてもうれしかった。
だから今体の交換をされたことが悔しくてたまらない。自分が健康だったらこんなことにはならなかったのに。そんな自分にできるのは一つしかない。
目の前のソレは侮辱されて顔が怒りに染まっていた。おそらく桐谷の体を乗っ取った時はすでに老人だったのだろう。足腰も弱りあまり遠くに行けず、世間の情報はテレビぐらいからしか得ることができないはずだ。
テレビなどいかに関心を引くかで内容が構成されている。ニュースでさえ自分の人生に関係ないようなどうでもいい事しか報道しない。要するに少しだけ世間知らずだ、それは先ほどの会話からもわかった。
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