封印されし者

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 生活習慣病から起きるのは2型糖尿病。1型の糖尿病は自己免疫異常などから起きる病気で、子供の頃発症するケースが多い。完治ができずインスリン注射が必須なのだ。  日頃から自分で持ち歩いていたのはもちろん、何かあった時のために工藤にも渡していた。文字通り命をつなぐ大切な注射なのだ。橋本は一回でも打ち忘れると目眩が起きるなど、症状は重いと話していた。  時間稼ぎをしてあえて体調不良を起こし、自ら注射をするのは麻薬だいう知識しかないそいつを騙すことに何とか成功した。  体を乗っ取られた時に橋本の記憶を深く探られていたらアウトだったのだが、記憶を探る隙を与えなければいけると踏んだ二人の作戦勝ちである。日頃からおかしなテンションで注射をしていたのが功を奏した。……そうしなければ、気が沈んでしまうからだと工藤にはわかる。 「とりあえずどうするかな、これ」  要は触らなければいいし人が入らないようにすればいいのだ。まず立ち入り禁止にしなければと工藤が考えていると、橋本はよっこいしょっと言いながら持ってきたカバンから何かを取り出す。 「いやおかしいだろ」  餅つきでもするのかと言いたくなるような、かなり大きめの木槌だった。 「何でゴルフバッグみたいなでかいカバン持ってきてるのかと思ったら、そんなの入れてきてたのか」 「何かぶっ壊す必要があるものがあったらいるかなと思って。クソ重かった」 「ツッコミが追いつかないけど今回は大正解だったな」  石板から言葉はないが、どこか焦っているような雰囲気が感じられた。二人はそれを完全に無視して橋本が木槌を振り上げる。 「ちなみに俺は馬鹿じゃねえよ、東大出てっから! お前の嫌味なんざ一文字も響かねえよザマァ!」  そう叫びながら渾身の力を込めて木槌で石板を叩き割ったのだった。  真っ二つになった石板からは黒い気配が徐々に消えていき、やがて完全になくなった。二人はペチンとハイタッチをした。 「……いや東大ってどういうこと?」 「これからは俺を敬い奉りたまえ」 「やだよ」
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