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息子との戦い 1
もうすぐ夕食の時間になる。
それにしても息子の帰り遅いな。
そう思った時に、息子が帰って来た。
「遅かったじゃない。またランドセルほっといて公園で遊んでたでしょ」
「へへへ……」
息子が苦笑いをする。
「お腹すいたでしょ。ご飯出来てるから、手を洗って食べなさい」
私は怒らなかった。
息子が機嫌を損ねたら困るからだ。
息子が手を洗っている間に、カレーライスとハンバーグをそれぞれの皿に盛り付ける。
一応、お水もつけてあげよう。
「うゎ〜。美味しそう」
息子から笑みがこぼれる。
目も輝いてるように見えた。
これで息子を騙せる。
息子も騙されたと思うだろう。
「いただきます」
そう言った息子は、躊躇なくカレーライスとハンバーグを食べる。
心の中で「よっしゃー」と叫んだ私は、小さくガッツポーズをするつもりが……。
「にんじんとたまねぎ溶かすほど煮込んだの?」
息子が問いかけてくる。
「はっ。何言ってるの」
「何言ってるのじゃないよ。もう分かるよお母さん。僕だって子供じゃないんだから」
そう言った息子は、いったん話を止めて、コップに入った水を飲む。
「ハンバーグだってそうだろう。味噌で匂いを消してるつもりだけど、よく見るとピーマンとねぎがあるの分かるもん」
息子にそう言われ、私は何も言い返せなかった。
「僕食べるよ」
「えっ」
「だから食べるよ。僕ももうすぐしたら中学生だし。そしたら給食じゃなくて弁当になるだろう。友達も嫌いな食べ物頑張って食べてるって言ってるし、嫌いな食べ物があると何か恥ずかしいんだよ」
私は耳を疑った。
息子が、そんな事を言ってくるなんて思わなかったからだ。
先に弁当の話をされてたら、地獄に突き落とされたような気分になっていた。
けど、今は違う。
息子から発せられた「食べるよ」と言う言葉、嫌いな食べ物を克服しようとする息子の姿、感極まり、涙が出そうになる。
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