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息子との戦い 2
だけど……。
何か腑に落ちない。
「そしたら、お母さんからの最終試験。これも食べて」
と言いながら、私はなすの煮浸しを息子の前に出した。
嬉しかったけど、何か騙された気分が拭えない。
素直に喜べばいいのに、喜べない私がいる。
私は感動よりも、主導権を握りたかった。
さぁ、どうする息子よ。
お前はこれを見て、どう動く。
私は何も言わず、息子の前に立っていた。
すると、息子は席を立ち、私の顔を見てニヤッと笑う。
「何よ」
私はムッとしながら、息子を見る。
「ちょっと待ってて」
そう言った息子は、台所に向かい、冷蔵庫から《ある物》を取り出し、私の前に置いた。
これは……。
「お母さん、納豆嫌いでしょう。僕に嫌いな物を食べさすんだったら、一緒に克服しよう」
なんてこった。でも何で息子が私の嫌いな食べ物を知っているのか?分からない。
呆然とする私に、息子はサラッと「お父さんから聞いたよ。これお父さんが買って来たんだ」と答える。
私は「あの野郎」と呟きながら、頭の中で旦那をボコボコにした。
「食べるわよ。だからあんたも食べなさいよ」
私がそう言うと息子は
「うん、食べよう。お互いに最終試験だね」
と言って席に座る。
私も席に座り、嫌いな納豆のパックを開けた。
このにおいが苦手で、涙が出てきた。
鼻をつまみながら息子を見ると、息子も泣いていた。
「ミスター食わず嫌い」が嫌いな食べ物を食っている。
「私も食べなきゃいけない」そう思えた。
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