3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
通勤中に曲を再生しようとして気づく。Arが消えている。姉ちゃんの新曲だ。
いや、それどころか姉ちゃんのアカウントが消えている。全て。
「……」
え、と言うところをぐっとこらえて静かにスマホを見つめる。
何があったんだ? 昨日の調子は悪くなかったはずだが。パスタを一緒に食べて、おやすみを言って。いつも通りの毎日だった。ように思えたのは俺だけだろうか。
俺は「姉ちゃん、大丈夫?」とメッセージを送信する。既読はつかない。こんなこと今までなかった。弟の俺に何も言わずに曲やアカウントを消すなんて。
不安だ。SNSを開くとタイムラインに「Ar消えてる……」「裂ケルさんどこ???」「帰ってきてくれ〜」といった投稿が見つかった。裂ケル、いや姉ちゃんの最初のファンとして何か発信するか迷ったが、不確定な情報を流すべきでない。だから何もせずにタイムラインをぼうと眺めていた。
電車が止まる。悩ましい気分で会社に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!