見切りメシ晩酌帳

休肝日∶大量の仕送り

先日、店内で子どもが迷子になったと女性のお客様が焦った様子で声をかけてきた。

店内はそんなに広くない。「一緒に探しましょう」と手分けして探した所、調味料などの売り場の通路に男の子は居た…永井さんと、一緒に。
迷子になった男の子の傍に、ずっとついていてくれたようだ。その優しさが嬉しくて、仕事後思わずメッセージを送っていた。
子どもの頃に、自分が迷子になった時の事を思い出しながら…。

それから、2、3日後の事だった。

帰宅すると不在票が入っており、見ると実家からの届け物のようだった。不思議に思いながら再配達を頼み、家に届けられたのは大きな段ボール箱。

「…何だこれ」

就職してからも度々仕送りのようなものはあったが、今回は段ボール箱の大きさがひとまわりもふたまわりも違う。恐る恐る開け、中を見ると…

「えええ！」

思わず大声を上げてしまった。
中には大量の食材が所狭しと敷き詰められていたのだ。勿論日持ちするものもあるが、早めに食べた方が良さそうな物も入っている。呆然とする僕は、何でこんな事になったのか考えた。

今まで、すぐに食べられるような物ばかり入っていた気がするが、今回は調理が必要な物も沢山入っている。……ん？調理？

「あ」

ひょんな事で妹と連絡を取っていた際に、自炊を始めた事を話していたかも知れない。きっとそれだ…!
僕は頭を抱えた。きっと世話好きな妹が母に自炊の事を言ったのだろう。手に取るように想像がつく流れに、盛大に溜め息をついた。

それにしても、この量だ。

パッと見ただけでも、3斤サイズの食パン、1箱30袋入のジャム、レトルトカレーの大缶、カットトマト大缶、パスタ5kg…って殆ど業務用サイズじゃないか！

常温保存ができるものはさておき、食パンなども切ってから冷凍保存できなくもないが、冷凍室に全て収まる量ではない。
かと言って処分するのは勿体ないし、職場に持って行って皆で分けれる程の量は無い。(トマト缶やカレー缶なんか分けられないし)

どうしたら…

「あ！」

身近にシェアできる人、居るじゃないか。
僕はスマホを取り出すと、メッセージを打ち込んだ。

『お疲れ様です。
実家から大量に食材が送られてきました。僕一人では食べ切れないので、良かったら少し貰ってもらえませんか？』

これでよし。
今日は平日だし、きっと返事はすぐには来ないだろう。僕は重い腰を上げて段ボール箱の中身(の一部)を片付け始めた。

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仕事の休憩時間。

スマホを確認すると、加藤くんからメッセージがきていた。確認してビックリ、大量の食材？

(一体どういう事だろう…?)

仕送りだろうか。自分はしてもらった事が無いから分からなかったが、どういう物が送られてくるのだろう。

「あ、ねぇ聞いてもいいかな？」

「はい？」

近くの席で弁当を食べていた若い男性社員に話しかけた。彼は確か一人暮らしだった筈だ。

「君一人暮らしだったよね？仕送りとかしてもらった事ある？」

「はい、ありますよ」

「どういうものが送られてくるの？」

「え？えーっと…」

意外な質問だったのか、少し驚きながらも教えてくれた。家庭によって様々だそうだが、基本的に日持ちするもので米や麺、インスタント食品、お菓子などが多いそうだ。

「成る程ね、ありがとう」

日持ちする物なら、大量に送られて来た所で大して困りはしない筈だが。益々謎は深まるばかりだ。しかしこちらとしても断る理由が無かったので、首をひねりながらも『ありがとう。じゃぁお言葉に甘えて』と返事をした。
詳しい事情は会ってから聞けばいいだろう。
加藤くんは休みだったのかすぐに返事が来て、何回かやり取りした後今週の土曜日に彼の家に行く事になった。