第二十一夜∶餃子

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「2回目完成です!さ、熱い内にいただきましょう」 「ありがとう」 フライパンはとりあえずそのままにして、2人でローテーブルを囲む。勿論、ビールも忘れずに。 「「乾杯」」 カチン、と缶を鳴らすと、ビールを一口。 「あーっ、美味しい!」 「本当、頑張った後のビールは格別だね」 「さてさて、餃子は上手くできたかな…」 ソワソワしながら箸を伸ばす雄介くんに倣い、私も餃子に箸を伸ばした。形が綺麗だったから、多分彼が包んだやつだ。 「うん!美味しい!」 「本当だね!美味しい!」 顔を見合わせ手ニッコリ。 噛めばじゅわりと中から肉汁が飛び出す。カリカリに焼けた皮が香ばしく、しっかり下味のついた肉だねはニンニクと生姜が効いており、食欲にブーストをかける。餃子、からのビール。最強。 「僕が作ったやつ、何か雰囲気が違うね?」 「貴文さんのは、揚げ焼きにしてみました」 「成る程!」 これなら厚めになってしまったヒダの部分も気にならず、寧ろカリカリとして煎餅のようないいツマミになる。 「カリカリで美味い!」 「僕の作った餃子と、貴文さんの作った餃子、それぞれ違って2度美味しいですね」 「ありがとう!しかしよく考えたね…」 揚げ焼きするとは。 嬉しそうにビールを片手に餃子を頬張る彼を見ながら、内心で拍手喝采。 「いや、たまたま思いついただけで。というか、このトマトとキムチの和物、めっちゃ美味しいです!キュウリも!」 「ははは。ありがとう。全然料理なんてレベルじゃないけど」 「そんなことないです!美味しいし…僕、最終的には美味しく食べられればOKって思ってます」 ごもっとも。 しかし今のはフォローと取れるかは微妙な所で、苦笑いしながら私は再び餃子を口にした。 「美味いなぁ…」 「いつもラインのやり取りだけだから、こうやって一緒に食べれて嬉しいし、余計美味しく感じますね!」 「うん、確かに。今まで面倒だったから用事がある時しか使って無かったけど、雄介くんとのやり取りは楽しいよ。一緒に飲んでる気になるしね」 今の発言は、ちょっと痛かっただろうか。 しかし彼は嬉しそうに笑って「ありがとうございます」と言ってくれたから、ホッと胸を撫で下ろした。 「僕も貴文さんとのライン楽しいです。でも、やっぱり実際会って一緒に飲んだ方が楽しいですね」 「それは、僕も同じ」 事実、親しい人と会話しながらの食事は、いつもの食事より何倍も美味しく感じるのだった。箸も酒も進む。 「雄介くん、これだけで足りる?」 「油結構使ってて腹に溜まるんで大丈夫です!」 飲んで、食べて、他愛無い話をして。 殆ど毎日のようにスーパーで会ってはいるが、久しぶりにゆっくり話した気がする。いつもは片づけまで含めて1時間程度だったが、気づけは作り始めてから2時間以上経っていた。料理は殆ど無く何となく飲んでいるだけになったので、眠たくなる前に片付けようと腰を浮かす。 「あっ、やります!」 「うんん、今日いっぱい頑張ってくれたから休んでて」 「でも…」 「いいからいいから」 「ね?」とダメ押しすると、雄介くんは「ありがとうございます」とフニャリと笑った。そんなに飲んでいないが、疲れが溜まっていたのかトロンと眠たそうだ。 「良かったら泊まってく?」 ぼおっとしながらチビチビ飲んでいる雄介くんに洗い物をしながら声をかけると、彼はビクリと肩を震わせた。 「いや!そんな!シャワーまで借りてしまった挙げ句泊まりなんて…そんな迷惑かけられないですよ」 「いや?別に迷惑じゃないよ。疲れてるでしょ。何か眠たそうだし…そのまま帰る方が危ないよ」 遠慮なくいきなり夕飯に誘ってしまったし。 疲れているのに、これ以上無理をして欲しくなかった。洗い物を終えてテーブルに戻ると、相変わらずトロンとした顔で、ともすると瞼が閉じてしまいそうだった。 「ほら、こっち」 「え、でも…」 「遠慮しないでいいから」 そう言って、普段私が寝ているベッドに促した。すると彼は「すみません…」と目を擦りながらベッドに転がった。上から、薄い肌掛け布団をかける。 「ん?」 グイ、と手首を引っ張られた。 「一緒に寝ましょう…」 「え」 「だって、貴文さんのベットでしょう?僕が寝たら貴文さんは何処で寝るんですか…」 ビックリした。そういう事か。 「ありがとう、適当にその辺で…」 「だめです。じゃぁ僕帰ります」 いやいやいや。 その状態じゃ危ないから。色々な意味で。 「……分かった。でも狭くなるよ?」 「へへっ、平気です」 ふにゃり、と嬉しそうに笑う顔に観念して、私は雄介くんの隣に横になった。私の身長が大きめの為セミダブルだったが、それでも大の男2人が寝るには手狭だった。 「…こうして寝るの、旅行以来ですね」 「そうだね…」 「また旅行も行きましょうね」 「うん」 妙な流れになってしまったが、これも彼なりの気遣いなのだろうか。猫のようにすり寄って眠る彼を見ながら、私も目を閉じ眠りについた。
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