百年ぶりの海

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百年ぶりの海

 朝起きたら8時、寝坊した。  8時45分には授業が始まるのに、間に合うだろうか?  いつもは片道30分、着替えて食べて出発するのは無理そうだ。  食べるのをあきらめてギリギリ間に合う時間に玄関を出たら、門の外が海になっていて驚いた。  学校まで自転車で行くつもりだったのだが、海の上を自転車で走るなんてできそうにないし、海の底を走っていては息が続かない。    もちろん自転車より早く泳げるわけもなく、僕は途方に暮れていた。  しばらく悩んでいた僕だが、照り付ける太陽と海の青さに、なんだか学校がどうでもよくなってきた。  家に戻って水着に着替えて、ビニールボートを引っ張り出し、僕は海へと漕ぎ出した。  持ってきた釣り竿で魚を釣ってみたら焼き魚が釣れた。  おいしくいただいてお昼寝して、泳いで疲れて又お昼寝。  流されるままに移動していたら、学校のグランドに到着した。  みんなもどうやら同じ感じらしく、水着姿で海を楽しんでいる。  中には先生たちの姿も見えるが、授業をするぞという気はないらしい。  海が去っていくまで学校はお休みに決まったようだ。  不思議な海は100年に一度やってくるらしい。  前にこの海を見たことを覚えているのはこの町で桜木さんただ一人だ。  普段は無口な110歳になる爺さんが、今日は饒舌にかつての海の話をしている。 2023-07-12
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