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女学校に復学する事もなく、わたくしは結城の家へ嫁ぐ事になりました。
でも、嫁ぐ前に。最後のわがままとして、一週間だけ別邸で過ごさせていただく事になりました。
体力も少しずつ戻ってきて。ようやく一人で歩けるようになりました。まだ、時々痺れはあるのですが。
海が見える草原まで歩いてきて、そのまま膝を抱えて座ります。誰も見ていませんから。着物の汚れだって、後で払えば平気です。
海沿いには、白い花が咲いていました。風に揺られてたゆたう白い花……
カサッ、と、草原に踏み入る音が響きました。
「……来てくれると思っていました。兄さま」
音の方を見れば、そこにはやはり、兄さまがいたのです。
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