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「……さま、お……さま」
声が、聞こえる。わたくしを呼んでいる。
頭ではわかっていても、身体が動かない。
あ、でも。少しずつ。身体に神経が伝わりはじめる。
「お嬢様、聞こえますか。お嬢様!」
「……ん……」
微かに、自分の瞼が動いたのがわかる。
何度か瞬きを繰り返して、ゆっくりと目を開いた。
「お、芳さん?」
「お嬢様っ!あぁ、よかった!」
まだ頭がぼぉっとしている。
それでもわたくしの手を、しっかりと握りしめている、お芳さんの温もりは伝わってくる。
「わたくしは、いったい……」
「いいんです。今は目覚めた事が何よりでございます。すぐ旦那様もお見えになられますからね」
「お父さま?」
お芳さんの言葉とほぼ同時に、わたくしを呼ぶ声が響き渡りました。
「美都!」
そこには見た事がないくらい、青ざめた顔のお父様がいらした。
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