16人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいえ。ただ、知らずと零れ落ちてしまったようです。鳥を、見ていただけなのですが」
「そうか。鳥を……」
「少し羨ましかったのです。何故か、こんな身体になってしまって。そこに至る記憶もなくて。わたくしは、どうして……」
最後まで言葉は口にできませんでした。
兄さまが、わたくしを強く抱き寄せられたので。
「……兄さま?」
強い力の中、兄さまが微かに震えている事に気付きました。
泣いて、いらっしゃるの?
「すまない」
一言だけ、呟いて。
兄さまはそのまま、足早に立ち去ってしまいました。
後には私の身体に微かに残った、兄さまの温もり。
それもすぐに、夢のように消えてしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!