水仙が咲く場所

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 少しずつ回復はしているものの、手の痺れやふらつきはおさまらず。  ただ、生きるだけの日々が続いた中、お父さまから思いがけない話を聞く事になりました。 「おまえの縁談が決まったよ」 「縁談?わたくしの?」  女学校へ通えなくなってひと月。このまま戻れない事も覚悟はしていました。そもそも、わたくしはこの先、生きていけるのかさえ、わからないのです。 「こんな不自由なわたくしを引き受けてくださる先なんて……」 「美都は覚えているかい?昔、別邸で一時期過ごしていただろう?」  海岸沿いにある別邸。  幼い頃。どこまでも広い草原を、裸足で駆けては寝転んで。そのまま眠ってしまって怒られた事もありました。  そう。追いかけっこをしたり……  追いかけっこ?どなたと?  兄さま?いいえ。兄さまはいなかった。  そう。兄さまは本邸。わたくしだけ、別邸。  わたくしだけ……何故? 「うっ……」 「美都?大丈夫かい?」 「だい、丈夫ですわ。色々な記憶がまだ、曖昧で……」 「そうか。まあ、幼かったからな。だが、そこで一緒に過ごした結城の嫡男が、おまえを嫁に欲しいそうだ」
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