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帰路
「ロゼッタ。これ、お前の名前だからな。言ってみ? ろ、ぜ、った」
カイルはロゼッタと書いた下に、横線を引きました。
「ろ、ぜ、った」
ロゼッタ姫は恐る恐る真似をします。
「そうそう。ロゼッタ、ロゼッタ」
「ロゼッタ、ロゼッタ」
「そうだ、上手い上手い!」
カイルは泣き出しそうな顔をして、笑うのでした。
「俺、カイル。カイル」
「カ、イル」
「そうだ、カイル。さあ、話はあとだ。外にみなを待たせている。突然ですまないが、帰るぞ!」
そういうとカイルは、お姫様を担ぎあげて、右肩に乗せました。ずんずん歩いて行くカイルに
(待って! まだほうきたちにお礼も言っていないのに!)
という思いを込めて、こぶしで叩きましたが意味がありませんでした。
お城の外には、たくさんの軍服を着たひとびとが、列を成して待っていました。
お城の出口でカイルが大声で
「ロゼッタ姫、ただいま奪還せり!」
と叫ぶと、音楽隊は派手な音楽を鳴らし始めました。
お姫様は、あまりの音の大きさにびっくりしてしまいました。
なかでもお姫様を一番驚かせたのは、象の姿でした。
緋色の布を身にまとった象に、カイルはお姫様を乗せ、自らも乗り込みました。生き物なのか、乗り物なのか、お姫様には判別できませんでした。
ただ見晴らしのよいその背中に、久しぶりに、ほんとうに久しぶりに、気分が晴れ晴れとする思いでした。行く手に大きな虹がかかっており、昼日中だというのに、花火が打ち上げられていました。
そんななかを、お姫様は国に帰っていったのです。
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