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「え!まじでガチで浮気されてたのお!?康隆くんってば、あり得ない!」
顔を合わせるやいなや、うわあんと泣きついてきた美蘭に、あずさは怒りの感情を露わにした。
「大学二年の時から三年も付き合っておいて、こんな仕打ちしてくるの!?美蘭なんか言い寄ってくる男、いっぱい断ってきたのにね!」
あずさの胸元で、涙を流し続ける美蘭。つい先ほど見てしまったリカとのトーク画面が、目に焼き付いて離れない。
「にゅ、入社してから態度が変だなあとは、思ってたのっ……」
ヒックヒックと乱れた呼吸の合間を縫い、彼女は思いの丈を吐き出した。
「な、なんか会話も全然弾まなくなったし、仕事の話ばっか聞かれて。そ、それ以外は興味なしって感じで……」
美蘭、仕事の調子はどう?
人間関係はうまくいってる?
仕事楽しい?
主婦は天気をネタに会話をもたせるけれど、康隆は仕事の話でその場を凌ぐ。学生時代とはガラリと変わった会話の内容に、美蘭は戸惑いを覚えていた。
「スマホも頻繁にチェックするようになったから、怪しいとは思ってたけど……」
けどもしかして、まさか、とこの状況下でも疑ってしまうのは、康隆のことが好きだから。彼がこんなことをする人間ではないと、美蘭はまだ信じたい。
華奢な身体、震えている。あずさは彼女の背を撫でる。
「ここ最近、美蘭ずっと不安がってたもんね、康隆くんの行動」
「ん…」
「入社してからーってことは、リカと康隆くんの出逢いは会社ってこと?」
「わかんない……もしかしたら会社の人たちと夜のお店とかに行って、そこで出逢ったのかもしれないし」
「そっか……どうするの?もう、別れるの?」
そこで途切れたふたりの会話。優しい温もりが背にあてられている間、美蘭はこんなことを思う。
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