#05 立場逆転

2/4
前へ
/138ページ
次へ
「ああ俺、明日は無理だごめん」  ピロートーク中のこと。明日の予定を聞いた美蘭に、康隆は悪びれもなくそう言った。 「ど、どうして?」 「んー、ちょっと」 「仕事は休みなんだよね?夜だけでも、会えないかなあ」 「てか美蘭は仕事だろ?今日もこうして泊まってんだし、そんな無理して毎日会わなくてもいいじゃん。疲れちゃうよ」  おやすみ、とぶっきらぼうに、寝返りをうつ康隆。彼の後頭部を見つめる美蘭の瞳からは、ぽたりと雫が垂れていく。  リカと会うくせに……  彼女がその予定を把握したのは、またもや覗いてしまった康隆のスマホによって。 『明日は丸一日一緒にいられるね、楽しみ〜!♡夜のホテルはリカが選んでいー?ネットでいいとこ見つけたんだ♡』  自分よりもリカを優先されたのは、これが初めてだった。いつの間にやら逆転していた立場に、美蘭は一晩泣き続けた。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加