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翌日。場所は美蘭の自宅付近のカフェテリア。眉間に皺を寄せる翔眞は、美蘭の心の内を探っていた。
「本当に、ちゃんと別れたいってあいつに言ったの……?」
疑われ、美蘭の胸がズキンと痛む。しかし約束を守れなかったのは自分の方だから、彼女は懸命に謝った。
「本当にごめんなさい、翔眞さんっ。でもわたし、彼にはちゃんと伝えたのっ。別れたいって、もう終わりにしようって。でもそしたら、そしたらあの人っ──」
昨夜の出来事を思い出せば、こんな陽気の良い空の下でも震える全身。テラス席へ遊びにきた小鳥がチュンと、美蘭の足元で鳴いていた。
「美蘭、その上着暑くない?」
暫しの沈黙を挟んだ後、翔眞が聞く。
「今日は夏日だって天気予報でやってたよ?脱げば?」
身体は恐怖で震えても、暑ければ汗をかく。つうっとこめかみから伝ったものを、美蘭は拭う。
「あ、暑くないっ」
「嘘。だって汗かいてるもん」
「ダイエット中だからいいのっ」
「それ以上痩せる必要ないって」
ほら貸して、と目の前から差し出される手に、首をぶんぶん横に振る美蘭。彼女のそんなさまはあからさまにおかしくて、翔眞の不安が募っていく。
「なにか、隠してる……?」
その時美蘭の両手が咄嗟に守ったのは、自身の首元。顎のすぐ真下までジッパーがあるジャケットは絶対に脱いではいけないと強く思ったら、勝手に動作へ出ていた。
「な、なにも隠してないっ」
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