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「康隆ー。今日の夕ご飯、カレーとシチューどっちがいい?」
大学帰りにそのまま映画デートを楽しんだ金曜の夜。真新しいキッチンに立ちながら、美蘭はルンルン気分。
「あ、でも今日はわたし、カレーな気分だなあっ。やっぱカレーにしようっと」
そう言って、エプロンを巻き出す彼女を、康隆は後ろからそっと抱きしめた。
「人にメニュー聞いといて、美蘭が即決かよ」
「え。やっぱシチューの方がよかった?」
「いや。俺はべつに、どっちでもいいけど」
「じゃあカレーで決まりねっ」
その時美蘭のうなじをつつつと伝ったのは、康隆の舌。
「あぁん、康隆……」
それはうなじから首筋を這いまわると、最後に耳元までやって来た。
「ご飯の前に、美蘭がほしい」
吐息がかかる距離で囁かれて、美蘭の顔が熱くなる。
「ば、ばかっ。もう夜の七時だよ?わたしお腹減っちゃったっ」
「俺もぺこぺこ」
「じゃあ急いでご飯作るから、離れ──」
「違うよ、だからだよ」
容易にくるっと美蘭を反転させた康隆は、彼女の唇も容易く奪う。
「んっ」
美蘭の両頬を包む康隆の手は、彼女の顔よりももっと熱い。舌の戯れ合いが終わればもう、彼女も料理どころじゃなくなった。
「俺の一番のご馳走は、美蘭だから」
まだ段ボールだらけの寝室で、ふたりが重なったのはそれからすぐのこと。
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