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☆01. 運命なんて
最悪。
とたまらず柊樹梨璃は顔を歪めた。時よ速く過ぎ去れ。目的地まで残り十五分。地獄の道のりだ。
もっと悪いことに、そいつはさらに撫でる手を強めてくる。うえ。気持ちわる。……調子に乗ってんじゃねえぞ、と、内心で梨璃は毒づく。いくらあたしがチビだからって。
頭の奥が沸騰する。かつての友達の話が思い出される。その子はしょっちゅう痴漢被害に遭って電車が嫌い、とこぼしていた。地味で露出の控えめな服を着てもいつも痴漢被害に遭う。学校や会社に遅れたくはないのでいつも泣き寝入り。されるがままにされ、涙を飲むあの屈辱。
制服のスカートを切り裂かれたことだってあったし、知らないあいだにスカートに男の液をぶっかけられていたこともあった。警察に届けを出すべき案件だ。しかし――。
この乱暴野郎はそんな苦悩もきっと想像しやしない。
見も知らない女に性暴力をふるう。そいつの手を探して、思い切り握り潰してやろうと思ったそのとき。
「おいあんた。なにをしている。……次の駅で降りるんだ」
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