☆01. 運命なんて

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 見れば、随分と背の高い美男子が痴漢野郎の手を掴み上げていた。助けて貰った、というよりも、余計なことを、とわめきたくなる気持ちのほうが強かった。  * * *  入社初日に遅刻してくる管理職候補など、聞いたことがない。  オフィスで社員の出社を待つ、人事部の園田(そのだ)紀子(のりこ)は首をかしげる。……にしても連絡もなしに一時間遅刻とは。この先が危ぶまれる……そしてようやく。彼は出社した。受付で通され、やってきた園田に向けて、男は頭を下げた。初日から申し訳ありません、と。 「以後、このようなことは繰り返さないように邁進いたしますので。ご指導ご鞭撻のほど――」
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