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それにしても。身なりがぱりっとしたイケメンで。寝こけて遅刻をするようなキャラではない。それは、人事部の仕事を長く経験しているからよく分かる――この男は、軽率に他人を裏切るような男ではない。それは、高級ものではなけれど、きちんとしたワイシャツを着こなし、びしっとしたスーツ姿で来ていることから察せられる。肩には勿論フケなんかも落ちておらず。――銀縁眼鏡が怜悧な印象を与えるが、それはこの男の下の名そのものである。――桐島零里。名前からしてイケメン臭が漂う男だが実際その通り。履歴書の写真で見たよりも数倍いい男だ――と思った。
しかし、園田紀子は気づいていた。この男の特徴に。
* * *
やれやれ初日からとんだ目に……。いやしかし、と桐島零里は考えを改める。
一番ひどい目に遭ったのは、――彼女だ。ちらと顔を見たが愛くるしい印象の、小柄な女性だった。リボンつきのフェミニンなブラウスを嫌味なく着こなせる、それは、彼女の感性の成せる技だろう。――それを。
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