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もうダメだと思い、強引にその場をすぐに立ち去ろうとした。
すると、先輩に肩を強く捕まれ、いまにも殴りかかりそうな勢いでこう言われた。
「いっとくけど、ここは俺たち5年生様の階段だからな。2年生は通るんじゃねぇ」
ビビりで泣き虫のくせに、負けず嫌いなので、その言葉が許せない。
「か、階段はみんなのものだよ」
咄嗟に出た言葉だったが、まずいことをしたと、後から冷や汗が止まらなくなった。
「あ? 喧嘩売ってんのかてめぇ。こうなりゃ、意地でも通してやらねぇ。」
先輩は、拳を上げて、私に襲いかかろうとした。
ぶつかったのだから、私も悪い。それに、ここにいたら殴り殺される。
私は、いったん教室へと戻ることにし、最後の力を振り絞りその場から逃げた。
教室に戻ると、山木先生と、弓川真紀子(ゆみかわまきこ)校長先生がいた。
先生たちの顔を見て、私は泣き出してしまい、校長からどうしたのかと尋ねられた。経緯を話しているうちに、少し落ち着いてきたので、山木先生の顔を見ると、先生は呆れた顔をしており、ボソリと、一言こう言った。
「ほかの階段通ればよかったでしょ」
信じられなかった。山木先生の顔も声も、私の知っている感じではなかったし、突き放されたような感覚に陥った。
結局その日は、違う階段を通って帰ることにした。
そして、それ以降、山木先生を信用できないままだった。
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