東の渡し

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 腰に巻いた縄紐から、結び目のついた細縄が、何本も下がっているものもあれば、二、三本だけのも、あった。 「あれは、なんなのだ、船頭、なにかのしるしかなのか?」  旅人は、知りたい気持ちを隠そうともせず、櫓漕ぎの船頭に、訊ねた。 「ヌシゃ、せっかちじゃのう、旅の人、焦るでない、焦るでない…」  櫓漕ぎの手を止めようともせず、船頭は、すれ違う渡し船を眺めながら、結繩の由来について、ポツリ、ポツリ、と話し始めた。
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