1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
腰に巻いた縄紐から、結び目のついた細縄が、何本も下がっているものもあれば、二、三本だけのも、あった。
「あれは、なんなのだ、船頭、なにかのしるしかなのか?」
旅人は、知りたい気持ちを隠そうともせず、櫓漕ぎの船頭に、訊ねた。
「ヌシゃ、せっかちじゃのう、旅の人、焦るでない、焦るでない…」
櫓漕ぎの手を止めようともせず、船頭は、すれ違う渡し船を眺めながら、結繩の由来について、ポツリ、ポツリ、と話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!