白告鳥

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「あいつ、  鳥を使って俺の本心を探って、  それでどうしたかったんだろう」 ついでに鳥の捕獲用プログラムも盗まれた。 ユーグの電子脳も鳥に破壊され、後を追う手段もない。 レンは、残された片腕をユーグに差し出す。 「完全自立型のアンドロイドか。  実用化されてるなんて」 「実験段階のプログラムだよ。  これはきっと、自分で発注した躯体」 腕を受け取る。 「実験段階?」 「国立電子脳研究所のな」 レンは息をのんだが、ユーグは腑に落ちていた。 あの早さも、鳥が標的にしない理由も、それなら説明がつく。 「俺が鳥を盗んだ時、  一緒にばら撒いたAIだ」 ヒトの心を支配するためのプログラム。 そのうちのひとつは、増殖しながらニンゲンを襲い回って、ひとつはニンゲンのふりをして自分を解き放ったハッカーに近づいた。 ユーグの首筋には、掴みかかられた時の痕が残っている。 「ニンゲンに、  恋をするアンドロイド。  …本当の意味で」 その硬い指先に触れる。
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