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「俺がその待ち合わせの相手だから、もう帰ってくれていいぞ」
なるべく怒りを抑えたつもりの右京の声は想像以上に低く出て、
「げっ! 市川 右京!?」
「この子の相手って市川!?」
「いや、俺ら別にやましいことなんてしてないぞ!」
この男三人組のことを右京は知らなかったが、相手の方は右京のことを知っていたようで、慌てて美紅から手を離し、逃げるようにして走り去っていった。
「あの、右京くん……顔怖いよ?」
美紅が恐る恐る右京の顔を覗き込み、
「何よりも大事な美紅がナンパされて、平気でいられるわけないだろ」
まだ怒っている右京は、ムッとしたまま美紅の髪をそっと撫でる。
「ごめん。怖かっただろ」
「右京くんが来てくれたから大丈夫。ありがとう」
にこにこと微笑む美紅を見て、
「ん」
右京もやっと安堵し、ふわりと優しく微笑んだ。
着替えなどのお泊まりセットが詰まった大きな鞄を美紅からひょいっと奪い取り、
「昼飯、どこかで食ってくか?」
「あ、一緒に食べようと思ってお弁当作ってきたんだけど」
「本当か!? 近くに公園があるから、そこで食べていこうか」
二人でのんびりと公園を目指す。
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