嬉し恥ずかし文化祭

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着替えをする時間すら与えてもらえなかった美紅はまだ白雪姫の衣装をまとったままで、恐怖に潤んだ瞳で恐る恐る右京を見上げる。 「……なんで、俺以外のヤツにあんなこと許したんだ」 不機嫌そうに見えていた右京は、今度は悲しそうな目をしていて、美紅の唇に右手の指先でそっと触れる。 「あの……唇の横にされたから、実際にはしてないよ! それに相手は天ちゃんだし――」 美紅は慌てて弁解しようとしたが、 「フリだろうと、相手が女だろうと、美紅が他のヤツとああいうことをしてるところは見たくなかった」 右京に思い切り抱き締められて、言葉が止まった。 「嫉妬しすぎて、頭がおかしくなりそうだ」 「ごめんなさい……」 彼がヤキモチ焼きなことは確かに知ってはいたけれど。 美紅がまだ右京に恋をする前、彼は美紅に他に好きな人がいることを知った上で、しつこくちょっかいをかけてきていたから。 だから、そんなに言うほど嫉妬深くはないのだろうと勝手に思っていた。 相手が天野だったら、許してもらえるだろうと軽く考えていた。 でももし、これが逆の立場だったら―― 美紅だって、絶対に嫌だと思うに違いない。 「右京くん」 彼の気持ちを痛いほどに理解した美紅に、もう迷いはなかった。
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