エピローグ

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桜はもうすっかりと散って新芽が伸び、葉桜へと変わりつつあったが、それを通り抜ける風はふわりと優しく暖かい。 外で食事をするには丁度いい気候だった。 桜の木が影をつくるベンチの上で、右京と美紅は弁当を広げ、二人で仲良く食べる。 「寒くないか?」 ふと右京が心配そうに訊ね、 「大丈夫だよ。(むし)ろ、すっごく気持ちいいくらい」 美紅はにこにこと笑顔で答えた。 「右京くんと外でお弁当食べるのって、付き合う前に一回だけあったよね?」 「あぁ……天野を買収した時だな」 右京は懐かしそうに遠くを見つめてから、 「実はあの時、美紅の弁当に入ってたミートボールが凄く美味そうで羨ましかった」 不意に真顔に戻り、美紅を真っ直ぐに見つめる。 「へ……?」 「だから今日、それが入ってて物凄く嬉しい」 右京は箸でつまんだミートボールを口の中に運び、 「うん。美味い!」 幸せそうに目を細めた。 おにぎりも卵焼きも、蓮根のきんぴらも、全てを“美味い”と言いながら食べ進める右京に、 「右京くん。どっちか飲む?」 美紅はいちごミルクとフルーツ・オレのパックジュースを差し出す。
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