嬉し恥ずかし文化祭

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「ちょっとだけ(かが)んで」 「うん?」 平均並みの身長しかない美紅が長身の彼と目線の高さを合わせるためには、彼に屈んでもらうしかない。 右京は美紅の体を離して、言われた通りに少し屈む。 それでもまだ縮まりきらない身長差をなくしたくて、美紅は少しだけ背伸びをして―― 初めて、美紅の方から右京の唇へと口付けた。 「!」 その瞬間、ぴくっと小さく体を震わせた右京が、美紅にはとても愛おしく思えて。 恥ずかしくて居た(たま)れない気持ちになるかと思っていたのに、彼が優しく抱き締めてくれるから、ずっとこのままでいたいとすら思えた。 美紅の方からゆっくりと唇を離すと、驚きと嬉しさを隠しきれない眼差しの右京と目が合い、美紅は照れ隠しのつもりでニコッと微笑んだ。 が、 「美紅。もっと」 右京が、今度は美紅を強めに抱き寄せて、噛み付くような激しいキスを浴びせる。 「……っ」 美紅が酸素を求めて薄く口を開けば、そこへ右京がすかさず舌を差し入れてきて、 「……んんっ……!」 美紅の唇から甘い吐息が零れた。
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