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しばらくしてから、漸く右京が美紅から唇を離し、
「今すぐ、このまま美紅を連れ去りたい」
両腕で、彼女が苦しくならない程度にきつく抱き締めた。
「こ、このままは困る!」
白雪姫という目立つ格好をしている美紅は酷く慌てたが、
「ん、そうだな。この後で行く茶道部のお茶会も、凄く楽しみにしてるんだもんな?」
違う意味に捉えた右京が、ふわりと優しく微笑んで美紅を離した。
そんな右京の顔をじっと見上げていた美紅は、
「……もう怒ってないの?」
つい先程まで不機嫌そうだった右京の表情を思い出して、恐る恐る訊ねた。
「まだ根には持ってるけど……美紅の方からキスしてくれたの初めてだし、今は嬉しさの方が勝ってる」
そしてまた美紅の体をぎゅっと優しく抱き締めて、
「ちょろいだろ、俺」
苦笑する声と共に、そんな台詞を吐き出した。
美紅はそんな彼の胸に顔を埋めながら、
「檸檬高の高嶺の花が、そんなにちょろくていいの?」
ふふふっ、と嬉しそうに微笑む。
そんな美紅の顔に手を添えて上を向かせた右京は、
「俺がちょろくなるのも、美紅限定だからな」
その唇に、触れるだけの優しいキスを落とした。
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