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一年生の出し物は午前中で終了したので、各々で昼食を済ませた後は、文化部の出し物を自由に見て回る。
美紅と右京は予定していた通り、天野・村田カップルと共に茶道部のお茶会へ。
美紅が行くと聞いて本当は相原も激しく行きたがったのだが、彼は抹茶が苦手らしく、大泣きしながら参加を辞退した。
茶道部の畳張りの部室で、浴衣をまとった部員たちが目の前で抹茶を点ててくれ、それを京都から取り寄せたという紅葉を模した練り切りと共に頂く。
「わぁ、綺麗!」
美しい練り切りと見事な出来の茶碗に見惚れた美紅が、ブレザーのポケットから取り出したスマホで写真をパシャリ。
「……可愛い」
そして、そんな美紅を愛おしそうな目で見つめていた右京が、不意にブレザーのポケットから取り出したスマホで記念にパシャリ。
「右京くん、今何撮ったの?」
目の前のお抹茶セットに夢中になっていた美紅は、彼が自分にスマホを向けていたことには気付いておらず、
「この和菓子撮ってた」
右京はさらりと嘘をついた。
(右京先輩、そういう嘘はつけるんだ……)
美紅の隣で誰よりも早く練り切りにかじりついていた天野は、右京の行いの一部始終を見ていたのだが、今日はもう余計なことは言わないでおこうと、貝になることを決めた。
そんな彼女を横目で眺めていた村田は、
(……ま、市川のこと怒らせたばっかりだもんな)
彼女のその判断は正しい、と心の中で激しく頷いたのだった。
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