嬉し恥ずかし文化祭

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――文化祭二日目。 この日は、吹奏楽部による演奏の鑑賞から始まった。 観客席では、クラスごとにまとまって座るのだが、美紅が演奏に真剣に耳を傾けているその隣で、天野は彼女の肩に寄りかかって堂々と居眠りをしていた。 まぁ、天野は演劇の練習に加えてバイトも変わらずに頑張って行っていたので、仕方ないと言えばそうなのだが。 美紅はやれやれという感じでそのまま肩を貸してあげていたのだが、それを遠くの方から見ていた右京は、 (天野のヤツ……また美紅にベッタリと……!) 言い知れぬ嫉妬心に掻き立てられていた。 その両サイドでは、 「……」 「……」 相原と村田が吹奏楽部の奏でる美しい音色に耳を傾けつつ、二人して右京の腕を両側から掴んで押さえていた。 「(お前ら、昨日から一体何なんだ!)」 右京が小声で文句を言いながら二人を交互に睨み、 「(市川保安協会の者です)」 「(平穏な文化祭を、いっちーから守るために派遣されました)」 村田と相原も小声でしれっと答える。 「(意味分からんわ!)」 右京はまたも小声で怒鳴りながら抵抗するが、二人からガッチリと押さえられていて上手く抜け出せなかった。 「(あと、クラスの女子からの依頼)」 村田がぼそりと付け足して、 「(……は!?)」 右京はわけが分からないという目を向ける。
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