366人が本棚に入れています
本棚に追加
――そして、その時はやってきた。
「そこのおにーさん、こっち向いてー!」
他校の学生も含む一般客たちから、右京は嫌というほど声をかけられまくり、疲労困憊していた時、
「あっ! みくたん! いらっしゃい!」
相原の嬉しそうな声が響き渡り、右京は条件反射的に物凄い速さでそちらを振り向く。
入口ドアのところには、天野と共にやってきた、愛しい美紅の姿が。
「美紅……!」
すぐに彼女の元に向かおうとして、
「おにーさん! 私のイケメンコーヒーにお砂糖入れて、ちゃんとあまーくしてよー」
右京を指名してきた女性客に引き止められ、舌打ちしたい気持ちを懸命に堪えて淡々と仕事をこなす。
そんな右京を入口に突っ立ったまま遠巻きに見ていた美紅は、
(あ、右京くん……カフェ店員さんの姿もお美しい……)
眼福とばかりに、その姿を目に焼き付けておくことにした。
あちこちの席から呼ばれて忙しそうな右京を横目で窺いつつ、案内された席へと座る。
女子の先輩からもらった例の食券を相原へと差し出すと、
「一応指名も出来るけど、みくたんはいっちーだよね?」
憧れの美紅と一対一で話せて超がつくほどご機嫌な相原は、にこにこと微笑む。
「はい。でも……右京くんが忙しかったら無理にとは……」
最初のコメントを投稿しよう!